東京高等裁判所 昭和41年(う)1883号 判決
被告人 五十嵐清一
〔抄 録〕
次に、職権により被告人に対する没収の言渡の当否を調査するに、原判決は被告人を賭博場開張図利罪として処断すると共に刑法第十九条を適用し検察庁で領置した原判決主文第四項掲記の各金品を被告人より没収する旨を宣告していることが明らかである。ところで記録を検討すると、右のうち符号1の場銭五千三十円(千円札三枚、百円札十四枚、十円硬貨六十一枚、五円硬貨四枚)については司法警察員巡査前島喜一作成の捜索差押調書添付の押収品目録(記録五二丁)によれば該金員が被告人の所有物である旨の記載があり、同人の司法警察員に対する昭和四十一年二月三日付供述調書中第十六項には同人が判示第二の(1)の犯行直前に両替用に百円札を一万円、釣銭用に十円硬貨を約千円、いずれも用意した旨の記載があるから(記録五五一丁)、右金五千三十円の中には被告人所有に係る右趣旨の金員が一部包含されているとも認められるが、他面右同調書第二十二項以下には右領置に係る金員は場銭であつて、盆ござの上に散乱していた金員である旨の記載もあり(記録五五七丁裏)その他右本件犯行現場に居合わせた大菅強次の司法警察員に対する同年同月八日付供述調書第十項(記録四三七丁)には右金員が場銭として現場に置かれていた賭客の所有物である旨の記載もあるから結局右金員の大部分は本件賭場における賭銭であつて且つ該賭博に参集した賭客中のなんぴとかの所有に属し、前叙被告人所有の両替用及び釣銭用の金員との区別ができないと認められるから、本件金五千三十円はその全部につきこれを本件賭博場開張図利罪に関し刑法第十九条第一項各号により被告人から没収すべからざるものである。
従つて原判決が右金員を被告人から没収したことは事実を誤認したか又は法令の適用を誤つたかの違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免れない。
(栗田 沼尻 近藤)